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【ロッドメンテナンス特集】

■はじめに
ヤマガブランクスアフターサービス担当のH田です。
蔓延するウイルスの影響もあり外出を控える動きの中で、
“家の中でできる事”として、また“読み物”としてロッドのメンテナンスを含めた
豆知識を記しますので、参考にして頂ければ幸いです。


・よくある質問編



1音鳴りの原因
最近よくいただくご質問の中に音鳴りという現象がございます。
「パキっ」という音であったり「ミシっ」という音であったり、、、
強度への不安を感じたり集中力を欠く要因となるかと思いますので
要因をいくつか紹介します。

① ガイドの音鳴り
音鳴りの大半はガイドの音鳴りです。
これは“購入してから時間が経っていない時”に起こりやすくなっています。
ガイドはブランクに対してスレッド(糸)で巻いてあり、エポキシ剤で幾度も
コーティングしていきます。
エポキシ剤がガイドに対して馴染んでいない状態の時に音鳴りという現象が
発生しますが、これは使用、時間経過に伴って解消する傾向にあります。
時間の経過に伴って解消しない場合はお気軽にご相談ください。

② 穂先側ブランクへの入水
最近、増加している要因がこちらです。
穂先側を“水中に落とした”という事もあるようですが
メンテナンスの際にシャワーなどの水圧でブランク内に水が入ってしまう
傾向が増えているようです。

ブランク内に水が入ると“音鳴りの症状”の他に竿の調子がダルくなったり
場合によってはコミの緩みを生じさせ、口割れの原因にもなってきます。
このブランク内への入水は簡単には乾燥しません。
ご家庭での保管で乾燥させようと思えば1ヵ月以上は掛かる思われますので
何よりもブランク内へ水が入らないよう意識して下さい。
もし症状が出た際には、ブランクの中に水が入っている可能性も考えてみて下さい。
水が入っていないかどうかの確認は、穂先のコミ口側を床にタオルなど柔らかい
ものを敷き、その上にトントンと50回程落としてみて下さい。






③その他の可能性として
・グリップ回りの接着不良
・ブランク内部への異物混入(砂など)
可能性としてございますが、ほとんどの場合が①もしくは②の状態です。


2ジョイント緩み
ロッド修理の中で“折れ”と同じ扱いとなるのが“口割れ”という現象です。





口割れの場合はブランクを交換する必要がありますので、「折れ」と同じ扱いになります。
原因としてはコミ合わせが緩んだ状態での“キャスト”もしくは“アクション入力”が考えられます。
ジョイントが緩むように感じる方は弊社ホームページ上に「ジョイント方法について」という記事がございますので参考下さい。

「ジョイント方法について」

ジョイントに関しては、使用に伴い緩んでいくものだとお考え下さい。
これはジョイント部にもくり返し、曲げ伸ばしの負荷が掛かり、わずかづつのズレは生じていくためです。
上記を踏まえ、ロッドのジョイントに関しては数投に一度でいいですので
確認していただく事が長くロッドを使う秘訣となります。

固着の外し方についても少し触れておきます。
外し方の前に絶対にやってはいけない事!
潤滑油は使わないでください!!!!
潤滑油を使う事でわずかな隙間が埋められて緩むものも緩まなくなります。
油で滑って緩みそうな感じがしますが、逆にピタッとくっついていると、、、
結構お手上げです!

外す際にガイドを持たないで!!
ガイドフレームが曲がります!
固着を外すことは無償で対応致しますが、ガイド交換には費用が掛かります。。。
あるいはひねったガイドの足でブランクを押し割ってしまうこともございます。
その場合はブランクも交換しなければならなくなり、更に高額な修理費用が
発生してしまいます。

固着の外し方につきましても弊社ホームページ上に記事がございますのでご参考ください。

「ロッドジョイントを抜く方法 ~How to separate a stuck fishing rod joint~」


3リールシート緩み
(主に青物等を視野に入れたビッグゲーム系ロッド)

次はリールシートの緩みについて記していきます。
利き手によっては指が掛かり緩むという事も考えられなくもありませんが
基本的には緩むことは少ないと考えています。
アフターサービスに相談があるのはフードが割れたという事案です。
原因は“締め込み過ぎ”が大半を占めます。リールとの相性もあります。
フードに関してはスクリューとなっていますので締め込みの際、自分たちが
思っている以上の力がフードに加わっています。
緩むことを考え、締めるだけ締めようとすればフードが割れる可能性が出てきます。
もしくはリールが固着し外れなくなりフード部とメインナット部が分離してしまう
ケースもあります。


緩みを感じやすいと言われる形状は大まかに2種類。
ロックナット式とロングナット式。

まずロックナット式が緩みやすいと感じる原因に関しては
“ロックナットの効果”が十分に発揮されていない可能性がございます。
ロックナットに関しては
1. メインナットを締める
2. ロックナットを締める
3. メインナットのみを少しだけ緩める!!
この3つの手順が必要です。
“メインナットを少しだけ緩める”という手順が抜けてしまうとロックナットは
充分な効果を生みません。
これはメインナットとロックナットがしっかりと押し合うことでねじ山とナットとの
摩擦が増し本来の能力を発揮します。
逆にこの手のリールシートナットが固着した場合は、メインナットを締め込むことで
外すことが出来る場合がございます。

次はロングナット式についてです。
ロングナットに関してはメインナットを長くすることで締める力を掛けやすくし、
さらに干渉するねじ山の数を増やすことで摩擦力を大きくし緩みにくく、締めやすい
設計となっております。
それゆえに締め込み過ぎてしまうというケースがございます。
ビッグゲーム系ですので緩みに対する不安も多少はあると思いますが
度を越してしまうと前述した破損につながりますのでご注意下さい。


・ロッドを折らない工夫編


1. 極力横置きしないで下さい。
踏んで(踏まれて)しまうおそれがあります。
基本的にはロッドは立てて置きましょう。
釣り竿なので直置きはしないでとまでは言えませんが
魚が釣れた時、地面に横に置き、近寄ってきた人に踏まれて折れる場合もございます。
可能な限り立てて置く事をおすすめしたいです。
ロッドホルダーという便利なアイテムも利用しましょう。






2. 運搬時は注意しましょう!
車のドアやトランク、ウインドウで挟んで折ってしまったという
お話も良くございます。
またドア、トランクを閉める時に竿尻があたるかあたらないかの状態で車に
積載するのではなくしっかりと干渉しない状態で収納しましょう。
ロッドに重たいタックルボックスが落ちてくる可能性がある積載もNGです。
釣行時はロッドの他にもタックルボックスやクーラーなど荷物も多くなる方も
いらっしゃると思いますが、できる限りロッドは一番上に積載しましょう。

ルアーを付けたままランガンされる方も釣り場で良くお見受けしますが、
都度ドラグを緩める等のロッドを折らないように注意する事が大事です。

3. 糸絡みやリールのベールの状態、ロッドジョイントは確認しましょう。
・ラインがロッドガイドに絡んだ状態でキャスト
・リールのベールが誤って戻ってしまった状態でキャスト
・ロッドジョイントが緩んだ状態でキャスト
上記はキャスト時の不注意による折損となります。


◎ロッド角度による折損


4. ランディング時は慎重に取り込みましょう
動画などではよく釣った魚を抜き上げている光景を目にしますが、
アフターサービス担当はヒヤヒヤします。。。
抜き上げは、熟練の技術と経験、判断力があってこその取り込み方法だと考えます。
魚の大きさとロッド負荷を見極め、遠心力を利用し、足場の高さ、竿の角度、、、
抜き上げ時はロッドに負荷が掛かるだけでなく、ロッドとラインの角度もより鋭角になります。
ロッドは鋭角の曲がりには非常に弱いものです。
魚が暴れるなどの不確定な要素も多いため、ランディング時は“ランディングネット”
等の使用をおすすめします。

よくやりがちな、釣った魚をロッドを立ててぶら下げる行為ですが、
これも折損の要因です。
魚を自分に近づけようとすれば必然的にロッドは立ち、角度がつきます。
そこで魚が暴れると、、、

5. ロッドの調子を見たり、ドラグ調整したりする時もロッドの角度は注意して下さい。
購入してすぐの時は、テンションも上がり、ロッドを触りたくなるもので
天井や床に押し当ててみたり、広い場所で軽く振ってみたり、、
少し危険なのは自分で曲げてみる行為です。
一人で曲げようとした場合、ロッドの弾力を確かめようと人の腕の幅でグリップと
ブランクを持って曲げたりすればどうしても角度がつきすぎてしまいます。

ドラグ調整時も同様で、ロッドにラインを通し、自分の方に引っ張ってもロッドは
役割を果たしていないので正しいドラグ調整にはなっておらず、むしろロッドを
痛めつけているだけの行為になっているかもしれません。


6. ルアー(スナップ、サルカン含む)の巻き込みも折れ要因です。
トップガイドリングに引っかかって巻き込むと先端に局所的に力がかかります。


◎ロッドのパワー限界による折損


7. カタログのスペックから逸脱しすぎた使用
カタログスペックは“最も使いやすいライン号数”や“ルアーウエイト”を
記載してます。
明らかに逸脱した使用に関しては折損の原因となりますのでご注意下さい。

8. 根掛かりは力いっぱい煽らない
根掛かりの際にロッドで煽る行為も折損の要因となります。
何もせず諦めるというのは大変悔しいことですが、ルアーを回収する事に
注力しすぎてロッドの限界を越えないように注意してください。

根掛かりを外す際は“ラインブレイカー”の使用をおすすめします。

9. 折れにつながるような傷
例えば根掛かりから外れたルアーがぶつかったり、ロッドワーク時に堤防や
磯にぶつけたり、、が積み重なっても折れにつながります。
釣行の頻度は人それぞれですが、ロッドの状態を把握する事も大切です。


・ロッドクリーニング編

釣りに行けない時はお家でロッドのクリーニングをしてみましょう!
お家でできる簡易クリーニング方法をご紹介します。

① ぬるま湯シャワーで全体クリーニング!
まずはじめに、使用後の汚れが残っている場合などはぬるま湯のシャワーで洗い流します。
注意する事は水圧と水温。
水圧が強いとブランク内に誤って水が入る可能性あります。
熱いお湯になってしまうとガイドエポキシ部にダメージを与える可能性もあります。
ガイドリングとガイドフレームは水の汚れやラインの色落ち汚れ、
藻などの水草がつきやすいので、柔らかめの歯ブラシを使用して汚れを落とします。

② 柔らかめのタオルで拭き上げ!
洗浄後は必ず拭き取りを行います。
特にガイド周りは入念に行ってください。
水道水にも少ないながら塩素が入っておりますので拭き残しがあると錆びに繋がる
可能性もございます。

拭く順番としてはブランク→ガイド周り→EVAグリップがおすすめです。
キレイな所から拭いていくことでキレイな状態のタオルで拭けます!
EVAグリップを先に拭くとすぐにタオルが汚れます。

③ EVAはサンドペーパーで新品時のような仕上がりに
320番手のサンドペーパーで軽くこすると手垢やテカリが取れます。
リールシートや金具を傷つけないようにマスキングをすることをおすすめします。
磨き上げ後はお湯を絞ったタオルで拭き上げるときれいになります。
より詳しくご紹介しております、記事がございますのでこちらをご覧ください。

ロッドの手入れ法 ~EVA編~

④ ブランクはお掃除シートで艶出し
艶を出したい場合はお掃除シートで拭く事でワックス効果があります。

■おわりに
長文になりましたが、以上がヤマガブランクスアフターサービスよりの特集記事に
なります。少しでも参考になれば幸いでございます。
最後に新型コロナウイルスの脅威が少しでも早く収束し、「釣り」という趣味を
心ゆくまで堪能できる事をヤマガブランクススタッフ一同、切に願っております。