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ヤマガブランクス・ブランドコンセプトについて

 

2021年より毎年初頭に公開しているヤマガブランクス特設ウェブページ「YB BASE」も2022年で2年目に突入しました。
本来はフィッシングショーや展示会で、弊社製品の新製品を含めた全てのラインナップの実物をお客様に直に、手で触れて、曲げて振ってもらうことを大きな目標としてきましたが、現在のコロナ禍の中にあっては、それも思うようにはできない現状です。
その中でもなんとかお客様に製品の情報をお伝えできないかという想いから、手作りで始めたウェブページが「YB BASE」です。
また、毎年配布させていただいておりますカタログにおきましても、2020年よりほぼ全ての機種における動画を製作してQRコードを表記したりと色々と試行錯誤しておりますが、釣りにおいて重要な道具である釣り竿を選ぶ材料としては、まだまだ足りないと感じております。
そして、「YB BASE 2022」は一部旧機種も含めた現行の全ラインナップの静荷重曲がり比較が確認できる「ベンディング・コレクション」をメインに、新機種を軸とした解説ブログ&動画をまとめる構成としました。
静荷重を掛けた状態での曲がり比較は、ラインの角度や負荷のかかり具合が実際の魚とのやり取りとは異なるので、ロッドの性能全てを表現できるわけではありませんが、それでもなかなか面白いものになっております。
今回も材料は全て自社スタッフで製作しておりますので、至らない点もあるかとは思いますが、ぜひ「YB BASE 2022」が皆様の道具選びの材料の一つになれば幸いです。
自社発信のメディアも手作りが多いヤマガブランクスですが、やはりそこは自社工場を構えての竿作りにこだわるメーカーという社風にも大きく影響されています。そこで、ここではヤマガブランクスのブランドコンセプトと歴史について、お話しさせていただこうと思います。

 

メイドインジャパンへのこだわり

ヤマガブランクスというロッドブランドの立ち上げは2008年で、2023年で15周年を迎えます。
母体である株式会社 山鹿釣具というロッド工場は1990年の設立ですので、会社自体のロッド製造に携わってきた期間は2022年で32年目です。
そして、ヤマガブランクスというロッドブランドの立ち上げたのは、やはり国内自社工場にこだわったもの作りに可能性を見いだしていたからに他なりません。
もちろん、製品の良さには国内製も海外製も関係ありませんし、単純に国内製だから良いという意味ではありません。
私たちが誇りに思っているのは積み重ねてきた工場の歴史です。
釣り竿という特殊な工業製品の製造にはいわゆる汎用機械ではなく、既成では存在しない特殊な機械が必要です。特にブランク製造工程において、私たちは独自に開発し、改良を重ねた専用機械を使用しています。
独自に開発した機械で、独自の設定で試行錯誤を繰り返してきた職人の歴史こそ工場の歴史であり、唯一無二のものです。
同じ素材、同じ設計図でブランクを作ったとしても、工場が違えばブランクの仕上がりも変わってきます。
これが釣り竿作りの面白いところであり、工場というものの本質でもあると思います。

私たちは工場の中で失敗と成功を繰り返しながら歴史を紡いできた誇りがあり、それがメイドインジャパンへのこだわりでもあります。
より具体的に言えば、メイドイン ヤマガブランクス・ファクトリーであることに価値を見いだしたのです。
そういった目線で見れば、釣り竿の市場には品物の良い悪いはなく、多様な工場から生まれた個性の際立つ製品が溢れていることになります。
その中でヤマガブランクスを選んで貰うためには、独自の設計、独自の製品コンセプトが必要となり、その為にはスキルを積み重ねた国内自社工場は大きな武器となる筈だと私たちは信じました。
そして、それこそがヤマガブランクスというブランドの出発点です。
現在のアフターサービスの修理方法の一つに、破損したロッドから使用できるガイドを外し、新たなブランクにその外したガイドを乗せ換えて修理代を抑える「ガイド再利用」というサービスがありますが(保証書使用時のみ)、これも『職人がいる自社工場』であることを最大限に生かしたものです。
工場の力、職人の力、そして積み重ねた経験と歴史、それこそが私たちがロッドに表記するメイドインジャパンの刻印に込められた意味です。

 

ヤマガブランクスの求めるもの

ヤマガブランクスのルアーロッドのコンセプトは、これまでにもカタログ等で繰り返しお伝えしてきました「軽く」「よく飛び」「強い」という3つです。
特にソルトのルアーゲームにおいて、飛距離は非常に重要です。より遠くに飛ばすにはできる限りラインを細くする必要があり、そうなるとルアーとの結束部が弱くなるので太いリーダーでラインシステムを組む、というソルトルアーゲームの基本構造が、シンプルにヤマガブランクスの竿作りに反映されています。(ジギングロッドはキャストしませんので、「よく飛び」の部分は「ルアーを意のままに操れる」になりますね)
細いラインで遠くの大物を獲るためには、硬すぎるロッドでは飛ばないし、高切れの恐れがありますので使用するラインを選んでしまいます。逆に柔らかすぎるロッドでは魚が暴れにくくラインへの負荷は減りますが、ファイトが長引き、またキャストできるルアーウェイトの幅も狭くなります。
そこで、ヤマガブランクスのロッドの設計においては、カーボンブランクスの特性による「曲がり」と「反発」をキャストとファイトに効率的に生かすことが基本となります。
企画したロッドが目指すべきターゲットやフィールドに対して使いやすいかどうかを考えながら、曲がりと反発力を調整し、突き詰めていくわけですが、極端な調子になることは避けています。なぜなら、海というフィールドは日本国内だけでも多種多様で、これでなければダメ、という法則が存在しないからです。また、これも大きな要素ですが、海で釣りをしているとヒットする魚のサイズを選べないことが多々あり、アジ狙いでシーバスがヒットして竿が折れた、ということにはなりにくいロッドを作りたかったのです。(もちろん、適切なラインとドラグ設定は必須ですが)
ヤマガブランクスのロッドが全体的に汎用性能が高めなのは、こういった理由があります。
2022年度の新製品であるブルーカレント・プラグモデルはヤマガブランクスの中でも特徴的な、張りが強めのブランクです。それでもキャスト時とヒット時にはしっかりと曲がるようになっています。それは感度を最大限に求めたバトルウィップ・ティップランモデルTR63/Nでも同じです。
もちろん、ルアーロッドにおいて全ての性能を犠牲にせずに作ることは不可能ですが、それでも目の前に広がる海にある可能性を捨てずにチャレンジできるようなロッドこそ、ヤマガブランクスの求めるルアーロッドです。

メーカーとしてこんなことを言うのは躊躇しますが、ヤマガブランクスのロッドは少々の無理は利く、懐の深い作りとしています。
それは、主役は作り手である私たちではなくアングラーの皆さんであり、アングラーの個性と発想力こそが釣りの本質だと考え、出来る限り可能性を追求して欲しいからです。
釣り竿は道具でしかありませんが、良い道具であれば体の一部に足るものになり得る筈です。

その想いは創業から今も、何一つ変わりません。