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シーズン特集「春イカシーズン突入!! エギングロッド解説 vol.1 カリスタ編」

 3月に入り、いよいよ春イカシーズンに突入します!! そこで、今回のスタッフブログはシーズン特集ということで、春イカを主体にしたヤマガブランクスのエギングロッドをコンセプトや開発経緯などを含めて解説させていただきます。このシーズン特集は2019年度は力を入れて継続していくので、宜しくおねがいします!!

そこで、開発経緯などをお話する前に、まず今までのヤマガブランクスのエギングロッドの変遷を振り返りますと…

Various(2010~2014年)→New Various(2014~2018年)
BattleWhip(2011~2015年)
Calista(2013~2016年)→Calista TZ/NANO(2016年~)
Mebius(2018年~)

初代Variousはどちらかと言うとパンッとした硬めのロッドでしたが、2代目になりキャストフィールや軽快なシャクリを重視した設計にリニューアルしました。また現在はイカメタルモデルのみになっていますが、以前はBattleWhipシリーズにもショア用のラインナップがありました。こちらは粘り調子の設計を主体にしたシリーズでした。
現在はCalista TZ/NANO・Mebiusの2シリーズになっているわけですが、Calistaは初代より「軽さ」「投げやすさ」に重きを置いたシリーズになっており、ヤマガブランクスの歴史上で言えば、ブルーカレントやバリスティックなどで確立してきた「キャスト性能」を重視した流れにあるモデルです。
Mebiusに関しては詳細は後述しますが、コストパフォーマンスを求めつつ「エギング・プラスアルファ」を求めたシリーズであり、エギング用ながら汎用性の高さを求めたブランクで何ができるかを追求したシリーズです。
では、現行シリーズの詳細解説です。今回はヤマガブランクスのエギングロッドのフラッグシップシリーズである「Calista TZ/NANO」についてです!!

Calista TZ/NANOの開発コンセプトは単純に言えば、如何にエギングを軽快におこなえるかどうかをブランク性能に詰め込んだモデルです。軽く、投げやすく、少ない力でシャクれるかを追求しており、それは曲がりやすさと張りを両立させるという開発的には難しいものでした。

単純にエギをキビキビ動かしたければブランクを硬くすればいいのですが、それではエギのアクションが単調になりやすく、手首にくる負担も大きくなりすぎます。これをロッドの反発力とスピードを上げることで、より小さいモーションでエギをレスポンスよく動かせるブランクを練り込んでいったのがCalistaシリーズなのです。これは2016年からのリニューアルで採用されたトルザイトリングチタンガイド+ナノアロイ®技術により先鋭化されました。このナノアロイについては最後にも解説してありますので、気になる方は最後までお読みください。

全体の機種の詳しい説明はカタログやHPに譲りますが、今回はテーマは春イカということですので、やはりMクラスのモデルから解説していきましょう。

 

Calista TZ/NANOのMクラス3機種について
Calista TZ/NANOには3機種のMクラスモデルがあります。発売順に言えば86M・710M・82Mですが、710Mと82Mは追加機種です。なぜ、Mクラスのモデルが追加されていったのかは開発のストーリーがあります。まず、Calista TZ/NANOは前述の通り、軽快な扱いやすさ、各アクションの負荷の軽減を目指したシリーズであり、一般的なエギングロッドとは一線を画す曲がりを見せるモデルです。加えて、バットパワーについてもヤマガブランクスの最も得意とする部分であり、例えLクラスでもデカイカをしっかりと獲ることのできるパワーを与えています。この想定するデカイカにも設定がありまして、L/MLまでは2kgのイカまでは無難に獲ることができるパワー設定、Mクラスは2kg以上を獲るためのパワー設定とヤマガブランクスでは考えています。もちろん、Lクラスのロッドでも2kgアップを獲られている方も沢山いらっしゃいますし、設計的にも決して無理ではありませんが、あくまで想定設定の話です。(※基本的にヤマガブランクスのロッドは全て少々の無理には耐えるように設計されています)

デビューラインナップにあった86Mは、いわばエギングのベーシックモデルです。コアなエギンガーの皆様には当たり前のことですが、パワーロッドであるMクラスのモデルが何故、標準モデルなのかと言えば、これはエギングはアクションの強弱を自在に操ることでイカを誘うことが必須の釣りであり、様々な水深や潮流の場所で大きく激しく、または小さく繊細にエギを動かせることがロッドに求められる基本性能だからです。つまり、エギングロッドの汎用性を考えれば、ある程度の張りとバットの強さが必要になるわけです。

とは言え、最近ではエギもラインも進化していますので、負荷の少ないスラックジャークなどを駆使する展開も多くなり、昔ほどビシバシジャークが重用されない傾向にあり、より楽に扱えるMLクラスも人気です。


話をパワークラスに戻しますが、86Mがベーシックモデルであるのは間違いないものの、このエギアクション入力のレスポンスを持ったまま、より軽快に操作できるロッドを求めて追加されたのが710Mでした。

このモデルはコアなエギンガーからは使いやすさと一日使い倒して疲れない軽快さを高く評価されましたが、ショートレングスにして設計し直すことで操作のレスポンスは上がりましたが、バットパワーは86Mを下回りました。それでも2kgクラスを余裕で獲ることのできるパワーでしたので、この若干のパワーダウンは許容範囲でした。

弊社フィールドスタッフも軽快で高い操作性から710Mを多用しておりましたが、ここで要望が出てきました。それは710Mを使用して瀬戸などの潮流場で3kgクラスのデカイカを掛けた場合はキツイ!! というものでした。もちろん、そういった状況ならば86M・90Mを薦めるのですが、710Mの軽快な操作性を維持しながら86Mと同クラスのパワーをというお題をもらったわけです。

ここで弊社の設計も悩みつつも開発に着手し、開発をスタートしたのが82Mなのです。レングスを86Mより少し詰めつつパワーを落とさないようにするには、硬くなりすぎない微妙なラインを詰める必要があり、開発にはテスター陣も設計も苦労しておりました。結果的に710Mの軽快さと86Mに近いバットパワーを持ったブランクが仕上がり、ヤマガブランクスの考える「軽快さを研ぎ澄ましたデカイカロッド」が出来上がったわけです。


春イカのオススメモデルは?

では、Calista TZ/NANOで春イカシーズンにオススメのモデルとなると、正直、全モデルで2kgアップを狙えるので「全て!!」と言いたいところですが、ニーズに合わせて機種を選んでみます。とは言え、オススメ度合いはアングラー個々の体格やスタイルによっても変わってはきますので、参考程度に御覧ください。


3kgクラスを狙いたい!!

3kgを狙いたいというニーズは実際にはエリア的には限定されるとは思いますが、そのクラスになると硬い皮膚を貫くフッキングパワーも必要ですので、Calista TZ/NANOであれば82M・86M・90Mになるでしょう。この3機種であれば、鹿児島の離島や和歌山エリアのいわゆるレッドモンスターにも対応可能です。もちろん、82M・86Mは通常のエギングでもストレス無く使用できるモデルですが、90Mはロングフォール重視だったり、足場の高い場所などシチュエーションを選ぶモデルになっていますのでその点は考慮してください。


メインは2kgクラスまで!! 汎用性の高いものを!!

3kgクラスまでいかず、メインは出ても2kgアップの春イカ用でオススメなのは、710M・82M・86Mです。より軽快な使用感を求めるならば710M・82Mがランガン時の取り回しも良く、疲労を軽減してくれます。その中で瀬戸の潮流場などシャクリに高負荷が掛かるようなフィールドが多いならば、82M・86Mをオススメします。


繊細な誘いを駆使したい!! 体に負担の少ないものを!!

スラックジャークなど少ない力でエギを跳ねさせる繊細な誘いを駆使するならば、春イカといえども86L・82ML・89MLをオススメします。特に82MLと89MLはベーシックなエギングを展開できつつ、使用感は非常に軽快なので女性や初心者にもオススメのモデルです。

 上の特性比較表は大雑把ではありますが、Calista TZ/NANOシリーズの特性を解説したものです。しかし、実際は本シリーズにおいては小型イカ用・中型イカ・大型イカという分け方はしておりません。全てのモデルで一年を通して使用していただけるように開発したシリーズであり、今回の区分けはあくまで春イカ用としての考察だとご理解ください。
潮流場で3kgアップを狙うなどは限定したシチュエーションですし、実際は産卵絡みでシャローに差してくる個体を狙うわけですから、どのモデルでも春イカで使用できます。後はご自分のスタイルに合わせて、どういった点を重視するかで機種を選んでいかれると良いと思います!!

 

TO BE CONTINUED
 さて、前置きが無駄に長くなった春イカ特集ですが、まだ「Mebius」シリーズが残っています!! Mebiusはまた特殊なコンセプトを持ったシリーズであります!! こちらもどうぞ御覧ください。(近日アップ予定)

 

※おまけ・ナノアロイ®技術について
 弊社においてはナノアロイ®技術採用のブランクにはNANO表記が付くことが慣例となっていますが、ここでナノアロイ®技術について簡単に説明しますと、大まかにはナノアロイ®技術とはカーボンの炭素繊維に染み込ませてあるレジン(樹脂)のことであり、焼成後の炭素繊維を固めるレジンの分子密度が非常に小さく繊維の隅々まで染み渡る性質があります。このナノアロイ®技術で作られたプリプレグ(カーボンシート)は焼成後には衝撃を瞬間的に吸収しながら反発して破損しにくいという性質を持ちます。(←ものすごく大雑把に説明しています)
 弊社のロッドの場合では瞬間的な追従性とリフトパワー、ブレの収束の速さなどの性質が得られたと判断して採用していくわけです。ここで「弊社のロッド」はとわざわざ前置きしたのは、ナノアロイ®技術を採用したブランクでも、それだけでロッド設計を構成するわけではなく、どのくらい使用するか、どの部分に使用するかはロッドメーカーごとに違うからです。やはりブランクの命は設計であり、素材で全ての特性が決定するわけではないのはご理解ください。
 おなじくナノアロイ®技術を採用しているライトゲームロッドのBlueCurrent TZ/NANOシリーズ、バリスティック、ブルースナイパー(ショアキャスティング)でも、素材の使用方法は違いますし、ナノアロイ®技術を採用したモデルでも使い方で特性は大きく変わってくるのです。
 また、ナノアロイ®技術を採用したプリプレグには様々な種類があり、引張強度(よく言うところのトン数ですね)の違うものも使い分けます。加えて、日進月歩で進化している素材でもあり、これからも面白い特性を持った素材が出てくるのは間違いありません。
 ここで注意点なのですが、全てのロッドをNANOにしてしまえば?と思われる方もいらっしゃるとは思いますが、プリプレグには他にも様々な種類と特性を持ったものがあり、ブランクの設計にも様々なものがあるので、求めているブランクに合う素材を組み合わせて設計するという観点で言えば、ナノアロイ®技術のプリプレグは選択肢の一つに過ぎません。フラッグシップモデルがNANOという訳ではありませんので、その点はご理解ください。要は求める性能との相性でマッチしたモデルがNANOモデルになっているのです。